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WHERE TO GO? Blog

あのころの大人

1990年代は、ぼくにとって海外ドラマの黄金期でした。
刑事コロンボ、弁護士ペリー・メイスン、そしてX-ファイル。

X-ファイルはアメリカのテレビドラマで、2000年代でいうところの『24』『プリズンブレイク』『LOST』のようなものです。
当時はミステリーサークルやサイコキネシス、ノストラダムスの大予言なんかがメディアをにぎわせていて、ぼくもそんな特番をよく観ていました。

時を同じくして、古畑任三郎シリーズが始まりました。
犯人役で登場する風間杜夫がX-ファイルのモルダー捜査官の声を吹き替えていると知ったときには、妙な心地がしました。
なぜならデビッド・ドゥカブニー扮するモルダー捜査官は敏腕であり、古畑任三郎に登場する風間杜夫はおっちょこちょいだったからです。
以来、モルダー捜査官を見ると風間杜夫の顔が浮かんでくるようになり、その都度やはり、妙な心地がしました。
小池朝雄や石田太郎の声を聞いてコロンボ警部を連想する人も多いのではないでしょうか。
※余談ですが古畑任三郎は警部「補」です。

それから十余年、X-ファイルを字幕で見る機会がありました。
初めて聞くデビッド・ドゥカブニーの肉声はとても新鮮でした。
スカリー捜査官やスキナー副長官、エイリアンやUFOといった映像に情さえ感じながら、ぼくはまたぼんやりと画面を眺めていました。

懐かしく、しかし新鮮な好奇心とともに画面を眺めていると、モルダー捜査官が何か小さなものをかじり、殻のようなものを吐き出すのを目にしました。
かじっては吐き出し、かじっては吐き出し、そんなシーンを眺めていると、今よりも感化されやすかった時代がよみがえって「モルダー捜査官と同じものを食べたい」と思うに至ったのです。

子供はカッコいい大人のまねをします。
サングラスに憧れたり、たばこを吸ってみたり、飲めない酒に酔ってみたり。
やがて成人したぼくは、たばこを捨て、必要に応じてサングラスを使い、味わうために酒を飲むようになりました。
それから、ふと世の中が色あせてしまう時期がきました。
楽しみというものが絵空事のように感じられる、そんな時期があったのです。

しばらくしてモルダー捜査官の食べていたものが「ひまわりの種」だと分かり、久しぶりにワクワクしながら外出しました。
近所の、そこそこ大きなリカーショップに行ったのですが、残念ながら取り扱いはなく、せめて「かぼちゃの種」だけ買って帰りました。
色はまるで違いますが、大きさは似ていたのです。

厚さ数ミリ程度のかぼちゃの種を小さくかじると、いい気分になりました。
モルダー捜査官がそうしたように、遠い目をしてかじるかぼちゃの種は、懐かしい大人の味がしました。