エスカレーター類

忘年会にお呼ばれし、せっかくだからと近隣のビルをまわった。そんな冬の夜の話。

ハービス・エントにはハイブラのテナントが多かった。
カーペットが敷かれた廊下はシャンパンゴールドの光に照らされ、重厚な雰囲気がテナントの価値を高めている。

一方、エスカレーター周りの照明は暗く、ここではエスカレーター本体に備えられたライトだけが保安の頼りである。これは意匠も兼ね備えているのだろう。人間がひとり通る幅しか持たないエスカレーターにおいて、追い越しなどあろうはずがない。ライト付きのエスカレーターはゆっくり動く。

こんな場所でコートからウィンザーノットを覗かせて闊歩していると、勘違いをしそうになる。
即ち「おれはこういった場にふさわしい人間なのだ」と。
一張羅のストレートチップに目をやり、ソファにくつろぐ。
すぐ目の前にある高級宝飾品店でプレゼント用のリングを物色することもやぶさかでない。

頃合いを見計らって店を出ると、いい時間である。
大阪駅前ビルの店へ急がなければならぬ。

件のエスカレーターを使って地下道へ潜り、数百メートルも歩かないうちに天井が低くなる。やがて年季の入った蛍光灯がタイルを照らし、目のホワイトバランスが狂う。

レモンイエローの光は、立ち飲み酒屋も激安DVD店も、地上へ上がるエスカレーターも、分け隔てなく照らしている。